輻射式冷暖房とは

輻射式冷暖房とは

輻射冷暖房は「輻射」による熱移動の原理を利用した冷暖房です。
パネル内部に冷水や温水を流すことで、パネル表面を冷やしたり温めます。
熱は温度の高い方から低い方に移動するため、夏は人や物から冷たいパネルに熱が移動、冬は温かいパネルから人や物に熱が移動することで風が無くても快適な室内環境をつくります。

多くは薄い板のようなパネルが複数並んだ形状で、壁に設置する他、部屋と部屋の境界に設置して間仕切りのように利用する場合もあります。

空気を調節するエアコンに対し、輻射式冷暖房はパネルから人や物(家具・床・壁)に熱を移動させることで、人間にとって最適な環境を作ります。

輻射式冷暖房の特徴

高さと幅があるパネル状

コンパクトなエアコンと比較すると、高さと幅があることが特徴です。
薄いパネルを壁に設置して空調します。

風がない

輻射式冷暖房には送風口がありません。
「熱の移動」で温めたり冷やしたりするため、空気を対流させるエアコンと異なり、風は出ません。

音がない

稼働音は非常に小さく、運転中でも音がほとんど気になりません。

各社製品ごとにそれぞれ特徴は異なりますが、共有するものとしては「風がないこと」と「音がないこと」が挙げられます。
風がないため花粉や埃が舞わず、稼働音が小さく無音に近いことがエアコンにはない輻射式冷暖房の大きな強みです。

輻射式冷暖房をよく知る4つのポイント

ここからは4つの軸で輻射式冷暖房について解説していきます。

  1. 設置場所
  2. 見た目
  3. 温度の変化
  4. 湿度の変化

1. 設置場所

設置場所は「壁面」です。間仕切りのように使用するケースもあります。
床や天井には設置できません。

輻射式冷暖房が部屋の壁面に設置されるのは、熱のやり取りをスムーズに行うためです。「熱のやり取り」と言うと難しく感じるかと思いますが、シンプルに「熱が移動している」とお考えください。

輻射式冷暖房が人を温める時、パネルから遠赤外線を放射し、人や物に熱を伝えます。

遠赤外線は光ですので、直線的に、まっすぐ進みます。
これは極端な例ですが、部屋の壁面の上の部分のみに設置すると「天井と上半身」しか温まりません。壁面を覆うことで頭から足先まで満遍なく温かくなります。また私たち人間だけでなく、天井から床、家具に至るまで、部屋中に熱が伝わります。

2. 見た目

輻射式冷暖房は、床から天井にかけて縦に伸びるパネルの形状をしています。

パネルの「面」から遠赤外線が出ているため、部屋など屋内環境に適した「面の広さ」が必要になります。
よって、部屋を占める割合はエアコンに比べて多くなります。
弊社(株式会社エコミナミ)の施工事例では、壁に馴染ませたい、インパクトがあるためオブジェクトのように使いたいといったご要望がありました。

馴染ませるか、魅せるかは家の設計とも関わってきます。

新築に設置するケースでは「設計の早い段階で設計士に相談する」と、住み心地やインテリアとのバランスも取りやすいです。

3. 温度の変化

輻射式冷暖房の電源を入れてからの温度変化は、とても緩やかです。

急激に冷やす・温めることはありません。
じっくりと冷やし温めます。
冷房・暖房の効果は、電源を切った後も長く持続します。

冷え方は、日差しの照る暑い場所から、木陰のような涼しい場所に移動した時に似ています。徐々に体から熱が抜けていき、火照りが冷め、快適な状態になります。
輻射式パネルが人体の熱を吸い取るため、限りなく自然に近いやり方で体を冷まします。

温まり方は、太陽光を全身に浴びた時のイメージに近いです。
エアコンの場合は「温かい空気」によって体も温まりますが、輻射式冷暖房は遠赤外線の輻射熱がパネルから私たちの体に直接届きます。
パネルから熱を受け取った箇所は太陽光を受け止めたように徐々に温まっていきます。
全身にか不足なく熱が届くため、身体の芯まで温まります。

4. 湿度の変化

夏場は輻射式冷暖房の電源を入れると湿度がゆっくりと下がります。
その後はカラッとした快適な時間が長く続き、電源オフ後もしばらくはその環境を維持します。
夏の湿気を含んだ空気を取り払う点は、エアコンにはない輻射式冷暖房の強みです。

また冬場も「パネルから人や物に熱を移すだけ」のため、エアコンのように空気を乾燥させることはありません。

輻射式冷暖房の仕組み

エアコンと比較しながら輻射式冷暖房の仕組みについて解説します。

エアコンと輻射式冷暖房の大きな違いは、冷やし方・温め方にあります。温めたり冷やしたりする「仕組み」の違いです。違った仕組みで空調するため「何を」冷やしたり、温めたりしているかという「対象」も異なります。

エアコンは「空気」を冷やし・温めます。
他方、輻射式冷暖房は「人や物」を直接冷やし・温めます。

エアコンの冷やし方・温め方

エアコンは送風口から風を送るだけでなく、室内の空気をパイプを通して室外機に運び出してコントロールしています。

  1. 室内の空気を吸い込む。
  2. 空気を冷やす・温める。
  3. 調整した空気を室内に戻す。

つまりエアコンから送られる風は、元々は室内にあった空気です。
室内の空気を冷やしたり、温めたりして、室内に戻します。
調整された空気は風によって室内を循環し、室温が変化します。

輻射式冷暖房の冷やし方・温め方

輻射式冷暖房の場合、パネルと人や物の間で熱のやり取りを行います。

温める仕組み

パネルから人や物に熱を移動させる(熱を与えるため温かくなる)

冷やす仕組み

人や物からパネルに熱を移動させる(熱を奪うため涼しくなる)

このように熱(遠赤外線)を移動させることで、対象を冷やしたり、温めたりします。

熱の移動とは?仕組みをさらに詳しく解説

輻射式冷暖房が「熱のやり取りを行う」と解説しました。ではこの熱とは何か? それは「遠赤外線」です。

輻射式冷暖房が私たちを温める時、パネルから人体に遠赤外線を移動させています。
まず輻射式パネルから遠赤外線を放射します。放射された遠赤外線を、私たちの体が受け止めます。すると、人体の細胞に含まれるミトコンドリアが励起して熱エネルギーを起こします。この熱エネルギーによって、私たちの体は温かくなります。これが輻射式冷暖房によって、人体が温まる仕組みです。

温める時は「パネルから人体に」熱(遠赤外線)を移動させています。反対に、冷やす時は「人体からパネルに」遠赤外線を移動させます。

これはあまり知られていない事実ですが、私たちの体や、室内の家具、天井、床などを含む「物質」は、遠赤外線を放射しています。そして遠赤外線は、温度の高い方から低い方へ移動します。つまり、夏場は輻射式パネルを「物体(人体・家具)や室温より低い温度」に設定することで、私たち人間や家具等から、遠赤外線が自然にパネルに移動していく仕組みです。このように熱がパネルに移動することで、結果的に室内が冷やされるという仕組みです。

仕組みの違いが意味すること

空気を冷やしたり、温めたりするエアコン。
対象(人・物)を冷やしたり、温めたりする輻射式冷暖房。

「仕組みの違い」は、私たちが感じる涼しさ・温かさと関係しています。

例えばエアコンで足元まで温かくならないのは「人」ではなく「空気」を温めているためです。
温かい空気は上に行くため、下の空気は冷たいままです。そのため足元に温かい空気が集まらず、冷えたままになってしまいます。

対して、輻射式冷暖房は、パネルから人に直接熱を伝えます。
よって、足元まで温かくなります。

次ページでは、冷やす・温める仕組みと絡めながら、輻射式冷暖房のメリットを紹介していきます。

今までにない自然な快適
健康に寄与する空調輻射式冷暖房ラジアン